家族にも

迷惑かけっぱなしだから、

もう悲しい顔を見せて、

家族を悲しませたり

したくなかった。


俺はそのまま

二階に上がっていき、

自分の部屋に戻った。


部屋には

微かな綾の香りが

残っていた。


「綾……。」


そう呟いても、

現実は変わらない。


何をやっても変えられない。


俺は体の力を抜いて、

ベットに倒れこんだ。


倒れこんだベットには

やっぱり綾の香りが

残っていた。


その香りに

俺の胸は締め付けられ、

行き場のない気持ちは、

どこへも進むことができず

漂っていた。