「……ア、アンタも、見かけによらず……っく、苦労してるんだな……っ」



涙をこらえながら、必死に水沢君が言葉を振り絞る。



「―― ……すると……なんだ? つまりっ…、ど、どうしても……自分じゃ涙が出せないから……、よく泣く俺が……うっ……アンタの師匠になって……泣き方を教えろって……っ……ことか……?」

「そ、そうなんですっ!」



とにかくこの奇妙な体質を改善したい思いと、水沢君のことをもっと知りたいという不思議な感情から、私は何度もウンウンと大きくうなずいた。



「………… ―――― 」

「……よーし、わかった!」



腕組みをしながらしばらく何事か考えていた水沢君が、突然勢いよく立ち上がる。



「『師匠と弟子』ってのはさすがに無理だけど、俺なんかに出来ることがあれば協力してやるよ!」



こうして、ひょんなことから私と水沢君の『涙の課外授業』が始まったのだった。