そんな私の心中を知る由もない明里は



「あっ!雫、雫っ」

「え?」



相変わらず嬉しそうな顔で、私の名前を呼んだ。



「ほらっ、雫の王子様が迎えに来たよっ」

「お、王子様っ!?」



ニヒヒ、と含み笑いをしながら、教室の入り口を指さす明里。


振り向いたその先には、私の大好きな『泣き虫王子』がこちらを見ながら立っていた。



「ほらほらっ。見惚れてないで、さっさと行った行ったっ」

「んも~、明里っ!」



真っ赤になりながら怒る私に、「じゃあね~」と手を振りながら、明里が早く行けとばかりに私を促す。



「じゃ、じゃあまたねっ」



そう言って手を振り返す私に、明里が返事のかわりにパチンとウインクをした。