泣き虫王子と哀願少女



「潤っ!?」


……潤君っ!?



予想外のことに、一瞬固まる先生とリカちゃん。


その隙に私は、ありったけの力を振り絞り大声を出した。



「潤君っ! 助けてっっ!!」

「っ!」



その声で我に返った先生が、私の口を力任せに手で塞ぐ。



「ん……ふぅ……むぐっ……」

「このっ……静かにしろっ……」



顔をよじって抗うものの、それを退けるだけの力はもう私には残っていなかった。



潤君! ここだよっ! お願い、気が付いて……っ!



祈るような気持ちで目をギュッと瞑る。



「誰か、そこにいるのか?」



! 気付いてくれたっ!



「んー……んんっ……ふぐっ」



再び声を出そうにも、どうしても出すことができない。



あっ!



その時、以前漫画で読んだ今の状況と同じような場面が、不意に私の脳裏をよぎった。



そして……



ガブッ



「うおっ! いってえー!!」



漫画同様、力いっぱい先生の指に噛みついたのだった。