泣き虫王子と哀願少女



「やだっ! 離してっ……!」



渾身の力をこめて抵抗する私を、いとも簡単に先生が受け流す。


震える私の両腕を頭上で束ねさせ、それを左手で抑え込むと、空いた右手の指で私の頬を撫でてきた。



「っ!!」



やだっ!やだやだやだっっ……!!



激しい嫌悪感が体中を駆け巡る。


尚も暴れる私の額に、生温かい先生の汗が幾つもポタポタと滴り落ちてきた。



「ひっ!」



悲鳴と同時に、先生の右手が私の顎を持ち上げる。



助けて……。



私の唇をなぞるように指先を走らせる。



助けて……。



やがて、先生の瞳が閉じられ徐々に近付き……。



助けてっ……。



私の唇に重ねようとした、その時 ――



助けてっ……潤君っ……!



「おい、ニャン太っ!」

「!?」



廊下から潤君の声が聞こえてきたのだった。