泣き虫王子と哀願少女



「逃げようったってそうはいかないわよ?」



ニヤっと冷笑を浮かべ嘲笑うように私を見つめるリカちゃん。



シャッ


「っ!!」



それに呼応するかのように、先生が窓辺のカーテンを勢いよく閉めた。



どうしようっ……! 逃げ道がないっ!



力突くで逃げようとしても相手は2人。


うち1人は男性である。


どう考えても敵うはずがない。


それならば……



「だ、誰かっ……! 誰か助けてっ!!」



精一杯大きな声で叫んだのだが……。



「ふふふっ。いくら叫んだって無駄よ~?今は中間テスト前で部活停止中。生徒はみんな帰ってしまったもの」

「……!」



しまった!



「それにここは、ただでさえ人の出入りが少ない管理棟。しかも3階の一番端の教室よ?どう考えたって誰も気付いてくれるはずないわよね~?」



なんてタイミングが悪いのだろう。


いや、これも全て仕組まれていたことなのだろうか?


クツクツというリカちゃんの笑い声が、静まり返った教室に響き渡る。


やがて……



「じゃあ貴矢。お遊びはこれくらいにして……さっさとやっちゃって!」

「!!」



激しい憎悪に満ちた顔で、リカちゃんが吐き捨てるように言葉を発したのだった。