泣き虫王子と哀願少女



「ねぇ、先生……?」

「ん?」

「男の人の手って、なんでこんなに大きくてあったかいんだろうね……」

「うーん、なんでだろうなぁ?」

「……」

「こんなふうに、好きな女を守るためかもしれないなぁ」

「! ……うん、そうかもね……」



潤君の手も大きくて温かくて大好きだった。


だけど、その手が守るべきものは、もう私じゃなくてリカちゃんなんだ……。



「先生?」

「おう?」

「初恋が実らないってゆーの、本当だったんだね」

「……。まーな。俺も実らなかったしな」

「先生もちゃんと恋したことあったんだ!」

「失礼な! 当ったり前だろ~?これでも初恋は幼稚園の先生だぜ?」

「ぷっ!」

「あ~! 笑うんじゃね~っつ~の!」



クスクスと笑いながら静かに目を閉じる。


先程まであんなに苦しかった心も、先生のおかげで幾分軽くなったような気がした。