泣き虫王子と哀願少女



「離して下さいっ!」

「や~だよ。先にぶつかってきたのはお前だろ?」

「う……」



須藤先生の言葉があまりにも正論すぎて、言い返すことができない。



「だいたいさ~、そんな泣きそうな顔したお前、ほっとけるかっつ~の」

「っ! …………」

「で、どうしたんだ? なんかあったんだろ?」

「…………」



先生の問いには答えず、唇をギュッと噛みひたすら俯く私。


どうしたものかと、先生が困ったように溜め息をつく。


そして ――


「よ~しわかった!」

「?」

「お前具合悪そうだから、1時限目授業出なくていいぞ~」

「……」

「そのかわり ―― 」



先生の目が怪しく光る。



「保健室じゃなくて、数学準備室で休んでろ」

「えっ!?」