泣き虫王子と哀願少女



「ハァッ……ハァッ……」



いったいどこをどう走っただろうか。



なんだか最近、こんなふうに走ってばかりだ……。



そんなことを自嘲めきながら思った瞬間



―― ドンッ



「キャッ」

「うわっ!」



前も見ず闇雲に走っていた私は、勢いよく誰かの肩にぶつかってしまった。



「痛たぁ……」

「いってぇー……」

「っ! ご、ごめんなさいっ!」



ようやく我に返り、ぶつかった相手のほうを慌てて振り返る。



「! 須藤先生っ!?」

「おう。なんだ深海か。……って、どうしたんだその顔!?」

「あっ……!」



涙こそ出ていないものの、余程酷い顔をしていたのだろう。


須藤先生が先程の明里同様、ギョッと目を見開きながら私を見つめている。



「あ……の、すみませんっ!」



そんな状況にいたたまれなくなった私は、咄嗟にその場から逃げ出そうとしたのだが……



「待てっ、深海っ!」

「っ!」



須藤先生に腕をつかまれ動けなくなってしまったのだった。