泣き虫王子と哀願少女



「? どうしたの?雫ちゃん?」



固まってしまった私の顔を、リカちゃんが心配そうに覗き込む。



「あ、ごめん! なんでもないの」

「そう?ならいいんだけど……。あっ、それでね……」

「うん?」



今まで元気そうだったリカちゃんが、突然小声になり私の耳元で囁いた。



「ちょっと話したいことがあるから、明日のお昼休みに屋上に来てくれる?」

「? うん、いいけど」



なんだろう?



「エヘへ」と照れながら微笑むリカちゃんと、その様子に戸惑う私。


そんな私をよそに、リカちゃんはニャン太の姿を見つけるなり、そばへと歩み寄った。



「キャ~ッ! ニャンコ可っ愛い~っ! 私猫大好きなのっ!」



目をキラキラさせながらニャン太との距離を縮めて行く。



「ねっねっ、潤、ニャンコ撫でてもい~い?」

「あぁ」



潤君とご機嫌で戯れているニャン太へと手を伸ばした瞬間 ――



バリッ!


「シャーッ!」

「キャッ! 痛っ!!」



激しい威嚇と共に、ニャン太から私の時以上に手痛い洗礼を受けたのだった。