泣き虫王子と哀願少女



―― あの嫌がらせ、まだ続いてたんだ。



にわかに図書室での苦い記憶が蘇る。


「ねぇ、もしかして今回だけじゃなくて、例の嫌がらせって続いてたの?」

「う……、いや……まぁ……」



明らかに動揺する潤君。


どうやら隠し事が苦手なタイプのようだ。


それにしてもあれから潤君が何も言ってこなかった為、あれ1度きりのことだと思っていたのに、よもや今現在も続いていたとは……。


しかも須藤先生とのことまで知っているなんて、どう考えても普通ではありえない。


私達のやり取りを誰かが盗み見していたとも到底思えなかった。



だとするといったい誰が……?



神妙な面持ちでしばらく考え込む私。


もうちょっと詳しい話が聞きたくて口を開きかけたその瞬間 ――



「潤っ!」

「!」



校舎の陰から、突然リカちゃんが姿を現したのだった。