泣き虫王子と哀願少女



「?」



私の声に潤君が振り向く。


おもむろに立ち上がると、呆然と立ち尽くす私のもとへと近付いてきた。



「落ちたぞ?」



そう言って私が落としたニャン太の餌を拾い、差し出してくる。



「あ、ごめん! ありがとっ……」

「おう」



ようやく我に返った私は、慌てて餌を受け取りお礼を告げた。



「にゃ~ん」

「お? よしよし、わかったわかった」



潤君を追いかけるようにして、ニャン太が潤君の足もとに絡みついてくる。


それをあやすように、潤君がしゃがみ込んで再びニャン太を撫で回し始めた。



「な、なんか、久しぶりだね」

「おう、そうだな」

「…………」

「…………」



妙に緊張しているせいか会話が続かない。



「潤君は元気だった?」

「まあな。お前は?」

「うん、私もぼちぼち……かな」

「そうか……」



度々訪れる沈黙。


そんななんともぎこちないやりとりをしていると「そういえば」と、潤君がふと何かを思い出したように口を開いた。