泣き虫王子と哀願少女



「水沢はさ~、誰がどう見たって宝生とお似合いだろ?」

「う……」

「お前みたいなガキんちょには、水沢みたいに融通きかないガキより、俺ぐらい大人な男のほうが絶対合ってると思うぜ?」

「…………」



リカちゃんと潤君とのことを持ち出され、途端に元気がなくなる私。



「お前にそんな顔させてんのは水沢だろ? 俺ならお前にそんな悲しい顔させないけどね~」



先生の言葉に、益々シュンとなる。



「まぁ俺としちゃ、その顔はその顔で違う意味でそそられるからべつにい~けどさ」

「っ!」

「おっ! その顔もなかなかだぜ?」

「先生っ!!」



散々私をからかった先生は「じゃあな、考えといてくれよ」と言い置き、楽しそうに笑いながら教室を出て行った。



「先生、本当に本気なのかな……」



ひとり残された教室で、再び溜め息をつく。



「好きとか付き合うとか……なんかもうよくわかんないよ……」



机に突っ伏した私は、しばらく先生の言葉を頭の中で思い返し続けたのだった。