泣き虫王子と哀願少女



「着いちゃった……」



抵抗する体を引きずりながら、ついに保健室の前へとやってきた。


教室からは何の物音も聞こえてこない。


救急車を呼ばなかったことからしても、特に大事には至らなかったのだろう。



「この壁の向こう側に、2人はいるんだ」



そう思うと、リカちゃんを心配する気持ちと共に、たまらなく切ない感情が心の底から湧き上がってきた。





廊下でたたずむこと5分。



「いつまでもこうしてるわけにはいかないよね……」



ついに意を決した私が扉の前へと歩み寄る。



「……。あれ?」



よく見ると、保健室の扉が少しだけ開いていた。


そのまま扉を開けようか迷う私。


迷ってちゃだめ、と自分を叱咤し扉に手をかけた瞬間……



「潤っ!」


……っ!?



リカちゃんの泣きそうな声が耳に突き刺さったのだった。