泣き虫王子と哀願少女



「キャッ!」



ドサッ



目の前が暗闇に包まれる。



「大丈夫か!?」

「ケガないか!?」



遠くで聞こえるザワザワとしたたくさんのざわめき。



……ん……。あれ……私、どうしたんだっけ……?



突然のことに頭が混乱していて、自分が倒れている理由さえも思い出せない。



「……おいっ! おいっ、 深海っ!」



あれれ? 潤君の声がする。

『深海』って、名前まで呼んでくれた……。



朦朧とする意識の中うっすらと目を開けると、いつか見た心配そうな潤君の顔が瞳いっぱいに飛び込んできた。



「潤……君?」

「深海っ! ケガしてないか!?」



この前と同じようなシチュエーションに、不謹慎にも嬉しくなる私。



「うん、大……丈夫。どこも……痛くないよ?」

「そうか……」



私の言葉に安堵したように、潤君の眉間に深く刻まれたしわが和らいだ。



「う……ん……」

「あっ! リカちゃんはっ!?」



苦しそうな声が耳に入り、ハッと我に返る。


飛び跳ねるようにして起き上がり、慌てて声の主を探したのだが……。


先程までリカちゃんがいた方に目をやると、人だかりに囲まれるようにしてリカちゃんが倒れていたのだった。