泣き虫王子と哀願少女



……あれ?



しばらくそのまま歩いていると、突然何かが私の脳裏をかすめた。



なんだかこれと同じことが前にもあったような……。



不意にデジャビュのような、懐かしい感覚に襲われる。



でも、潤君に出会ったのはまだ数か月前のことだし……。



どう考えても過去に同じようなことがあったはずはないのだが……。



そんなことを考えていると、突然潤君がおかしなことを聞いてきた。



「ところでさ、お前もしかして昔T市に住んでなかったか?」


「えっ?住んでたけど……何で知ってるの?」



私、それらしきこと潤君に話したことあったっけ……?


不思議に思いもう一度聞き返そうとした時、ようやく出口が見えてきた。



「出口だ」

「あっ……」



……もっと、こうしてたかったな……。



名残惜しい気持ちを抑えつつ、手を繋いだまま一緒に出口をくぐったのだった。