泣き虫王子と哀願少女




「ケガしてないか?」

「うん……」



いるはずのない人物が突然目の前に現れて、思わずその姿を凝視する。



「ど……して、ここに?」



半ば放心状態で尋ねる私に、潤君が恥ずかしそうに視線をそらしながら呟いた。



「ったく……。お前は危なっかしいから心配でしょーがねーんだよ」

「!」



ドキン……ドキン……



心臓が激しく高鳴る。



「立てるか?」と差し出された潤君の手を取り、そっと立ち上がった。



―― あったかい……。



指先から伝わってくる温もりが、身体中に染み渡る。



「このまま手、繋いでてもいい……?」

「っ! ……あ、あぁ」



ドキン……ドキン……ドキン……



どうしよう……。潤君に心臓の音、聞こえちゃいそう……。



あまりの鼓動の激しさに、繋がれた手を通してそれが潤君に伝わってしまいそうだ。