泣き虫王子と哀願少女



「じゃあ私は潤と一緒に行くね!」



トイレから戻ったリカちゃんと合流し、今はお化け屋敷に来ているのだが……。


お化け屋敷は苦手だから、潤君と一緒に行くと言い張るリカちゃん。



本当は3人で入りたいのだが、1回の入場人数が2人までと制限されている。


そのため私は、1人で入るはめになってしまったのだった。



……うぅ……。私もお化け屋敷苦手なのにぃ……。



しかし可愛らしいウルウルとした瞳でリカちゃんからお願いされると、どうしても断ることができない。


「じゃぁ私達は先に行くね!」と潤君の腕に自分の腕をからめ、嬉しそうに入っていくリカちゃん。



「あ……」



―― ズキン……



その姿に呼応するかのように、私の胸がまたしても痛み始める。



なんで……、なんでこんなに胸が痛むんだろう……。



「どうぞー」

「あ、はいっ!」



お化け屋敷の係員に声をかけられた私は、痛む胸を押さえつつ、ひとり真っ暗な建物へと入って行ったのだった。