幸鷹と小花は祐司夫婦を空港まで見送ってから、幸鷹の家へと移動した。


「どうして俺のところに?
広さと使用人の数は君の所の方が多いだろ?」


「多いから嫌なの。」
だって、何してたかわかってしまうもの。」



「えっ・・・それって、まさか。
俺をもうスクラップブック以外の目で見てくれてるってことか?

ひとりの大人の男として見てくれたってことなんだな。」


小花は恥ずかしそうにしながら、コクンと頷いた。


「そ、そうなんだ。やったぁ!!
おっし、じゃ、早速祝いぢゃ、祝いしよ。

え・・・小花どうしたんだ?」



喜んで幸鷹が小花の顔を見ると、涙が流れていた。


「俺また、何か嫌なこと言ったのかな?」


「違うの。幸鷹さんがこんなに私といっしょに居るのをよろこんでくれるなんて、びっくりしちゃって。
私はずっと憧れの人、写真の人、お仕事は失敗しても知らなかったんだから仕方ないじゃないって思ってた。

だけど、幸鷹さんは私なんかといっしょに居たかったって。
いなかったらさびしかったって。
仕事しても消えないほど、私なんかのこと・・・お金を稼ぐ部分をぬいたら、取り柄なんてほとんどないのに。」


「そんなことないよ。
それをいったら、俺なんかなんで憧れになっちゃってるの?だもんな。
選手としてオリンピックでもいってりゃ、わかるけど、行けてないんだからな。

選手生命絶たれて、普通の人をやって、なおかつ親の残してくれた会社もダメにして君に助けてもらった男なんだぜ。
ヒモ同然っていってもいい。

まぁ、あのときは君に何かいうなんてあり得ないと思ったけど、今ならけっこう胸を張って言えると思ったんだ。

小花、結婚してくれ。
あ、準備がどうのって引っ掛かるなら婚約でもいい。
とにかく、結婚を前提として付き合ってほしい。
できれば・・・俺の家で。」


「幸鷹さん・・・。私できないことが多いんだよ。
使用人いないとまだ、奥さんらしいことなんてできないよ。」


「かまわないよ。2人でがんばっていけばいい。
そりゃ、ベストセラー小説家は少し控え目にしてもらわなきゃいけないかもしれないけど、おぼえていこう。」


「はいっ。」