そしてオープン翌日、小花はS&Y社にやってきた。


「こじんまりのはずだったけど、けっこう大所帯みたいね。」


「そうですね、ハミングの現場スタッフに幸鷹さんが声をかけたら、けっこうやってきたらしいから幸鷹さんは人気者だったってことですね。」


秘書の仲元といっしょに小花は事務の中を歩いていたら、階下のところに幸鷹と女性スタッフたちが楽しそうに話しているのが見えた。

しかも、そのうちのひとりと幸鷹は腕を組んでいる。


「あっ・・・そうだったの。そうだよね・・・。」


「小花センセどうかしましたか?」


「ううん、何でもない。
そろそろ、帰ろうかな。明日も提出しなきゃいけない原稿あったし・・・。」


「でも、今日はのんびりする予定では・・・?あれ?
あっ・・・わかりました。すぐ準備しますね。」



仲元も階下のところを見て事情を把握したのか、帰る支度を始めた。


そして、小花は1階の駐車場へ向かうと、幸鷹に止められた。


「まだ、顔もあわしてないのに帰ってしまうのかい?」


「いそがしそうだったから。」


「忙しくったって、社長を無視するわけないじゃないか。」


「私も忙しい身なので、早く次の仕事しないとね・・・。
あ、お祝いは事務所にいろいろ置いてきたから、あとで見ておいてね。」


「じゃ、俺がそっちの仕事場まで運転していくよ。
いろいろと話したいことがあったんだ。」


「そんなのいいって。さっきだってたくさん話す人はいるようだし、私なんかとしゃべったらお客様が変に思うだけだし・・・。」



「どうして?これだけの建物のお金を出してくれたオーナーに、足を向けてだって寝れないよ。」


「そんなふうに思わなくてもいいから。
私のミーハーな思いだけだから・・・気にしないで。」



「小花センセ、私はスタッフの車で帰りますので、小花センセは樋川さんと行ってください。」


「仲元さん!!待って・・・。あっ、そんな。」


「なんか気をきかせてくれたみたいだよ。あはははは。」


「あなたは勉強することもあるだろうし、ここでも忙しそうなんだから私なんか送らなくていいのに。」


「そうはいかないよ。俺はゆっくりと君と話したかった。」


「私はべつに・・・ないわよ。」


「あいかわらず、嘘がヘタだな。
俺は、まず報告しとかないと・・・。

俺の古巣っていうか父さんが残してくれた会社なんだけど・・・やっぱりパチンコ屋になってしまった。
でもさ、君が紹介してくれたスタッフに教えてもらいながら、俺なりにがんばって、君に最初に借りた金は今のジムの方に移すことに成功したよ。ありがとう。」


「そう。何とかなってほんとによかったわ。」


「それと、S&Y社の方なんだけど、小日向経理部長から紹介してもらったスタッフのおかげで堅実経営ができるようになったよ。
さっき、俺の隣にいた女性いただろ。彼女を紹介してもらったんだけど、すごく頭がきれる女性でとても助かるよ。」


「そう、よかったじゃない。」