隼丸の脳裏に、あの時の光景が蘇ってくる。
目の前で広がる悲惨な光景と不気味に笑う弦龍の姿が・・・


「俺は・・・」


隼丸はそう呟きながら、右手に銃を握り締めて弦龍に近づいていく。その目は、感情を無くしたように黒く、輝きを失っている。そんな隼丸の姿を見た深波と弦九朗は、危険を感じながらも、弦龍と虎黎を捕らえている為“最悪の事態”を考え始めている。しかし、祇儀と清澄は、隼丸の様子を冷静に見つめている。特に祇儀は、隼丸をただじっと見つめていた。


「殺したいんだろ?」


おもむろに口を開く弦龍。そして、不敵に笑いながら隼丸を挑発する。


「殺したいんだろ、なぁ。撃ってみろよ、ほら!撃てって!」


その言葉に、隼丸は何の躊躇いもなく引き金を引いた。しかし、銃弾は、弦龍の足元で煙を挙げながら、めり込んでいた。


「撃てるぞ、こうやって。いつでもお前の事なんか殺せる。」


そういいながら、弦龍の額に銃口を押し付ける。隼丸の光を失った瞳に、弦龍は恐怖を感じていた。
小刻みに震える身体。そんな事も気に留める事もなく、隼丸は銃を強く押し付ける。


「いつでもな・・・でもな・・・お前みたいなクズ野郎、殺す価値もねぇ。銃弾(たま)の無駄。」


そう言って、静かに銃を額から離すと、腰元に付けたホルダーに収納する。


「死ぬんじゃねぇぞ。生きて、苦しみ続けろ。その身体でな・・・それがお前にぴったりな罰だ。」


そういうと、思いっきり弦龍に蹴りを入れるとまた元の場所に戻り、座り込んだ。その隼丸と入れ替わるように、禮漸が弦龍の元へと向かう。
朦朧とする意識。何度も倒れそうになりながらも、歩みを進め、祇儀の横に倒れこむように座る。そんな彼の様子を緑涼は、静かに見つめる事しか出来なかった。それは、火燐も風燕も蓮流も一緒だった。