「うわ~っ!!」

椿の視界に入ってきた屋敷の景色は、ものすごく新鮮なものであった。
白を貴重とした屋敷の空間に、黒色の家具が点在する廊下と純白と透明、絨毯の紅が均等に存在を示す螺旋階段が椿たちを出迎える。美麗と徳良について歩く椿は、隣を歩く蓮流に「すごい広いですね。」と話す。蓮流も「そうだね。」と言葉を返すが、それ以上の言葉は返ってこなかった。

「ねぇねぇ~。」

椿の前を歩いていた香澄が、歩きながら後ろを振り向き、声をかけてくる。そして、ほんの少しの会話が始まった。

「椿ちゃんって本当に、正嗣の子どもなの?」
「そうですよ(笑)」
「ぜんぜん似てないね(笑)」
「そうですか?」
「うん。まったく似てない!」
(やっぱり言われたか・・・)
「正嗣って、家ではどんな感じだったの?」
「どんなって言われると・・・」
「香澄!ちゃんと前向いてなるかないと、ぶつかりますよ!」
「は~い!!」

清澄に注意され、香澄はまたさっと前を向いてしまった。
「妹が申し訳ございません。」
「いえ、清澄さんって3人きょうだいなんですか?」
「いえ・・・。」
少し表情を曇らせた清澄。その顔を見て何かを感じ取った椿は思わず「か、香澄さんてすごく明るい方なんですね」と慌てて話題を少しそらすのだった。その様子を横で見ていた火燐は、そっと胸をなでおろすのであった。