命の足音【短編ver.】




しかし、今の一瞬は、今だけしか感じられないのだからその一瞬を大切にしたい。


一度、死のうとした僕を止めてくれたのは、土方さんだった。


どうせ、病でいずれ死ぬなら。


どうせ新撰組に役立たないのなら、生きている意味なんかない。


布団の上でなんか……死にたくない。刀を持てるはずなのに、そんなの格好悪いに決まっている。


死ぬのなら、戦場で。


それなのに戦場に行くことを体は拒む。


だったら、少しでも手が動かせるうちに、自らの手で死にたい。


そう思った僕は布団の上で刀を抜き放ち、切腹を試みた。




『離して下さい!死にたいと願ってはいけませんか!?』


『馬鹿野郎、そう願えることを奇跡と思え!』




さすが鬼の副長だと、改めて感じた瞬間だった。


この人は頭に角を何本でも生やしてしまう。


怒鳴り声だって、障子を破いてしまうくらいの勢いがあった。


……僕のために。


そう思ったら、涙なんて流したことないのに、それは頬を伝っていた。