晃が記憶を取り戻してから、早五年の月日が流れていた。

私達の間には今、二歳になる女の子がいる。

名前は沙織。


三人で毎日楽しい日々を過ごしていたのに、ある日突然…
晃が交通事故にあったと連絡を受けた。


急いで病院に駆け寄ると、晃は喉に管をつけ
酸素マスクをつけていた。


関係者に話を聞くと、晃は子供を守ろうとしていたみたい。


ちょうど小学生くらいの女の子。


相手がわき見運転をしていたとかじゃなく、突然車の前にその小学生と晃が飛び出してきたとのこと。


その女の子は軽傷で済んだんだけど、晃は今窮地に立たされている。


もしかすると、もう二度と目が覚めないかもしれないって
先生に言われたの。


頭を強く打ちつけたみたいで、脳へのダメージが強いんだって___



目が覚めるのは、奇跡に近い。



昏睡状態が続くのであれば、決断を下さないといけないってこと…



晃が言っていたんだよね、男の子欲しいって。


一緒にサッカーしたり、男同士裸の付き合いして、その子が大人になったら
お酒で乾杯する夢があるから、パパ頑張るって言っていたの。



まだ晃には告げていないけど、今私のお腹の中には小さな命が宿っている。


性別はまだ分からない。




この子の為にも、晃には沢山頑張ってもらわなくちゃいけないんだよ。



晃___




私は晃の手を私のお腹に当て、さすった。



「晃、分かる?
お腹の中に赤ちゃんがいるんだよ
お腹の中の赤ちゃんがきっと晃を守ってくれると信じてる」




私は晃の手を毎日毎日ひたすら握り、奇跡が起こるのを祈った。