「……鬼麟の?颯ちゃんがいいならいいけど……」



私には颯兄の背中しか見えないけど雰囲気と二人の声を聞いてると私は行っても平気なのかな?と思う。




「平気。総長室あるし。瑚琴、乗って」




「……う、うん……」




颯兄が私のことを降ろす。
降ろされた瞬間、頭に血が上りすぎたせいか視界が眩んだ。
少しふらつきながらアスファルトに足をつけて立つ。




目の前に黒い車が止まっていてそれに座ると隣に奈々さんで、助手席に颯兄が座った。




「出して。倉庫まで」




颯兄がそう言うと車はすぐに動き出した。




「……瑚琴ちゃん、怖かったよね。大丈夫……?」




眉を下げて私の頭を優しく撫でてくれる奈々さん。




「……だ、大丈っ……夫……で、す……」




奈々さんの優しい手の温もりに張り詰めていた糸がプツンといきなり切れたかのように私の目からは涙が溢れて止まらなかった。




「大丈夫だよ……瑚琴ちゃん」




私を抱きしめて優しく頭を撫でてくれる奈々さん。
奈々さんからは、颯兄と同じ香水の匂いがしてすごく安心してさらに涙が止まらなかった。