あの日あの時...あの場所で






柊に本命。

前から気になる女の子が出来たなんて、噂は流れてた。

さらに本命だなんて.....。


やっぱり柊は前に進んでるんだね。

私とは大違い。


ほんと...大違い。

ただの噂にこんなにも動揺させられてる。



「...瑠樹、大丈夫か?」

咲留の言葉にはっとする。

噂話に気を取られて食べるのが止まってたみたい。



「...あ..うん、大丈夫。何でもないよ」

フッと目を細めて咲留を見た。


「...瑠樹..お前、今でも..」

それ以上は言わないでと咲留の瞳を見つめ返した。


言葉にしてしまうと、思いが溢れてしまいそうで怖い。



「美味しいね?連れてきてくれてありがとう。また誘ってね」

私は会話を無理矢理すり替える。


「あ...ああ。いつでも連れてきてやる」

何か言いたげだった咲留だけれども、私に話を合わせてくれた。



「あ、じゃあ豪達も誘う」

「あ...あいつら連れてきたら大変になりそうじゃねぇか?それにあいつら無茶食いしそうで怖い」

店内を見渡した咲留は顔を歪ませた。


ま、女子率の多いこの場所に豪達連れてきたら大変かもね。


「だったら、豪だけにする」

豪だけなら、女の子達が騒ぎだしても一睨みされたら怯えちゃうから静かになるし。


「...ま、あいつはお前の番犬だしな。誘ってやっても良い」

豪だけなら、良いらしい。


「うん、じゃあ豪に言っとくね」

「ああ」

そんな会話をしながら食事を再開する。


咲留に余計な心配をかけちゃったな。



まだ過去に囚われてる私がいけないんだよね。

分かってる...分かってるけど。


柊の事が気になって仕方ないんだ。


柊の...本命...か。


どんな子なんだろう。


ハハハ...私だけが取り残されてるのか...。


胸の奥がキシッと軋んだ。






咲留とカフェを出た後、時間潰しのつもりで繁華街にやって来た。

休みとあって、学生の姿も多くて。


咲留に手を引かれながら、人並みを掻き分けて進む。


やっぱりここでも目立ってしまうのは仕方ないんだろうと思う。


すれ違う女の子達が瞳を輝かせて咲留を見ていた。


シスコンだけど、顔だけは無駄に良いもんね。


隣を見上げて小さく溜め息をついた。