「あのなぁ…。確かに俺は“美人なオンナ”って言ったよ。けど、そのオンナ…」

え、なに…?そんなに、溜めてまで言うことはなんなのっ⁉︎

わたしは、黙ってライオンあおちゃんを見つめた。

「ばばぁ、じゃねぇかよ」

あん⁉︎今コイツ、ばばぁって言った⁉︎ぶっ殺す‼︎絶対にぶっ殺す‼︎

「ぶっ‼︎」

んにゃろー‼︎今度はお前かよ‼︎吹き出しやがって‼︎ヤマネコのくせにー‼︎

マジで、なんなのコイツら‼︎

ライオンは『ばばぁ』なんて言いやがるし‼︎ヤマネコは吹き出すし‼︎

突然声をかけられて、付いてきたわたしもバカだったけどさ…。こんな屈辱って…。

あぁ、そうか。そういうことか。なーんだ。

わたしは、ゆっくりとワンコロを見た。

「ねぇ、ワンコロ」
「えっ?“ワンコロ”って、ボクのことー?なんだか、お姉さんに“ワンコロ”って言われるのキライじゃないなぁ!」

ワンコロは最初でこそ驚いていたものの、大きな目をパチクリさせながら喜んでいた。

「えぇ、そうよ。あなたのことよ。ねぇ、わたしをココに連れてきた理由ってこれ?みんなでヒマだからって、自分たちよりも年上のオンナ連れてきて、そういう屈辱的なこと言って楽しんでるの?まったく、冗談じゃないわよ‼︎帰るから」
「え、え、えっ⁉︎もうっ‼︎あおちゃんが変なこと言うからでしょー‼︎お姉さん、待って‼︎行っちゃダメー‼︎」

クルリと回れ右をして来た道を戻ろうとしたわたしに、ワンコロ眞一郎は大きな声でライオン碧都に向けた怒りをぶつけると、走ってきて再び、わたしの腕を掴んだ。

「離して。あのね、あなたたちと遊んでるほど、わたしはヒマじゃないわけ」

って、散歩してたんだから実際はヒマだったんだけど。そんなこと絶対言ってやんないっ。

「ご、ごめんね⁉︎ほら、あおちゃん!お姉さんに謝ってよ‼︎」

ワンコロ眞一郎は、ライオン碧都に向かって叫んだ。

「はぁっ⁉︎なんで俺が謝らないとなんねぇんだよ」

ケッ‼︎ライオン碧都は、そういう奴だと思ったよ‼︎でも、これで帰れる。さぁて、家に帰ってゆっくりしようかな。

って、思ってたのに…。

「じゃぁ、いい‼︎ボク、お姉さんとデートしてくるから‼︎行こう、お姉さん」

え、ちょ。なんでそうなるわけっ⁉︎ライオン碧都が謝らないからってデート⁉︎もう、意味わかんないわよ‼︎

あーぁ、散歩なんかしなけりゃ良かったよ…。どうして今日に限って家にいなかったのかしら、わたし…。

自分が行動したことを、思いきり憎まずにはいられなかった。