「よっしゃ‼︎話も終わったいうことで、準備しようや‼︎」
「うん、そうだね‼︎準備しちゃおー!」

楓の掛け声に、眞一郎が元気良く右手をグーして上に高々と上げ部屋から出る。

それに続くように、無言でヤマネコ尚樹も部屋を出た。

そして部屋には、わたしとケダモノの二人だけ。

早くケダモノも部屋から出ればいいのに。ただ、わたしをジッと見て何も言わない。こういう空間、苦手なんだけどなぁ…。

「早くしろよ」
「は、い…?何を…?」

かと思えば、急に言葉で急かすケダモノ。早く何をするの…?

「着替え」
「着替え…?」
「あぁっ…‼︎ほんと、ばばぁだなぁ‼︎なんにも覚えられねぇのかよ‼︎」

ちょ、そんなに怒らなくたっていいじゃない‼︎わたしだって、色々ありすぎて忘れてたんだからっ‼︎

「わりぃ、言い過ぎた」

ケダモノには、わたしがどう写って見えたんだろう。

さっきまで頭をガシガシ掻きむしってイライラしてたのに、途端謝ってきちゃってさっ。調子狂うじゃないっ。

「…わたしだって、色々ありすぎて不安なのよ」
「あぁ、わかってる」
「昨日の今日で、働けとか言われて」
「あぁ。でも…」

そこまで言うと、ケダモノ碧都は黙り込んだ。

「なに、気になるんだけど」
「いや、なんでもねぇ。忘れろ」
「なんでもないわけないじゃない。何か言おうとしてた」

“なんでもない”と言われれば、気になるし。“忘れろ”と言われれば、忘れられない。

「……いつか教えてやるよ」
「いつかって、いつ?」
「うっせぇな。いつかったら、いつかに決まってんだろうが‼︎」

また戻った。いつものライオン碧都だ。やっぱりコイツは、こうじゃなきゃ困る。

急に優しくなるとか…。

「反則…」
「あ?なんだって?」
「なんでもない。忘れて」
「はぁ?気になんだろうがよ」

ふんっ‼︎さっきの、お返しよ‼︎わたしが鼻で笑うと、ケダモノ碧都はおもしろくなさそうな顔をしていた。