「杏も入ってきたら?」

あー、一人のバカが帰ってきた。

「帰る」
「えっ?なんで、今日は泊まれるんだろ?」

二人して、わたしのこと騙して、バカにして。

「ていうか、婚約破棄する。もう、別れる」
「はっ?ちょ、待てよ。いきなりどうしたんだよ?」
「いきなり?いきなりって…。わたしのこと、バカにしてたくせに」
「いや、杏。意味が、」
「意味がわかんない⁉︎わかんないなら、教えてあげる。婚約者の母親とデキるヤツなんて、聞いたことないわよ‼︎」

その瞬間、真哉の顔色が変わった。真っ青になるって、こういう風になるんだ。へぇ。

「杏、」
「気安く名前呼ばないで‼︎気持ち悪い‼︎アンタなんて、大っ嫌い‼︎」

手当たり次第、近くにあるものを真哉にぶつけた。

でも真哉は怒ることなく、ただわたしが投げたものを受けていた。

その後、冷静になり話を聞けば。最初に言い寄ってきたのは、母親。

決して、わたしをキライになったわけじゃない。

一度だけ、関係を持ってほしいと言われ断ったらしい。

けど、母親の推しが強く、結局は負けてしまった。

よーく、わかった。真哉は、ただ巻き込まれただけ。

けど、受け入れたのは事実だ。