「いいじゃん。食えよ。杏のためだけに作ったんだぞ?」
「うぅ…」

そう言われると…。仕方ないなぁ。見られながら食べるの得意じゃないんだけど…。って、得意な人なんかいないよね。

もう一度、パスタをフォークに絡め口に運んだ。

んっ、やっぱり見た目同様濃厚ソースだ。これ、好き。

「どうなんだよ。お前の好みの味か…?」

碧都さっきまで堂々としてたのに、急に不安な顔になっちゃって。

可愛い、と思ったのは内緒にしとこうかな。

「うん、合格」
「はぁ?お前、何様だよ」
「もちろん、杏様」

ぷっ‼︎と、また顔を見合わせて笑う。やっぱりこの瞬間、碧都といる時が楽しい…。

「美味しかったよ、碧都」
「あぁ」

あの後、もくもくと食べ続けたわたしは、すぐに完食をした。

「あの…」
「ん?」
「また…コレ、食べたい…」

『また作って‼︎』とは言えず、お伺いを立てるようにして見れば。

「あぁ、いつでも作ってやるよ」

そう言って、また碧都は笑った。

海の家での仕事は、忙しいんだろうなと思ってた。

実際、天気が良ければ当然海に来る率も上がるから、人も増える。

それは海の家なら、どこもそうなんだと思う。

ただココは少し分かりづらい場所にあって、わざわざ来ないと来れない場所。

なのに意外とお客さんが多くて。

碧都たちがイケメンだから女性客だけかと思いきや、仕事帰りのサラリーマンたちも来る。

お店の雰囲気もあるかもしれないけど、碧都たちの人柄も関係あるんだなって思った。