年下オトコたちの誘惑【完】

「でもカレ、杏のこと好きだと思うけどなぁ。杏も好きなんだろ?」
「うーん…。多分、好き…。碧都が他のオンナノコと話してたら、いちいちイライラするし…」
「でも、怖い?」
「…うん」

そりゃ、怖いよ…。また、わたしじゃない人に気持ちがいっちゃうのだとしたら…。

それが自分の知り合いなら、なおさらだ。

悠ちゃんは、短く息を吐くと兄の目でわたしを見つめ、頭に大きな手をポンと置いた。

「なぁ、杏。俺の直感だけどさ、浮気は心配ないんじゃないかなぁ?」
「そんなの、わかんないよ…」
「いや、そりゃわかんないけどさ。なんとなく、カレから感じるんだよね。それに今スゴく視線感じるし…。俺の背中、穴開くんじゃない?」

くくくっ、と笑いを堪えながらも続けて悠ちゃんが言った。

「試してみる?」
「え?」
「と、いうか。試すもなにも、俺も杏に話があったんだよね」

話?話ってなんだろう。もしかして、もうわたしのお兄ちゃんするの飽きたとか⁉︎

そんなのヤダよっ。そんなこと言われたら、わたし…。

「ちょい、なに想像してる?」
「だ、だってぇ…。悠ちゃんは、ずっとわたしのお兄ちゃんでいてくれる…?」
「は?なに言ってんの。俺らは、兄妹でしょ?血は繋がってないけど、って当たり前だよな。親が違うんだから」

悠ちゃんが言うように、親は違うからまったくの他人なんだけど。

でも、わたしの家庭環境が複雑だったから、いつも悠ちゃんと一緒にいたんだ。

だから、ホントの兄妹みたく育ってきた。

半べそをかいてるわたしに悠ちゃんは、『おいで、杏』と、と笑った。

わたしはこの悠ちゃんの笑顔が、大好きなんだ。

碧都たちが見てるなんて忘れてたわたしは、思いきり悠ちゃんに抱きついた。