年下オトコたちの誘惑【完】

「婚約者…いたんだ」
「あー、うん…。まぁ、わたしも若くないしね…」

もう31だし。そういう人がいたって、おかしくない年齢だよ、ね?

「まだ、忘れられねぇの。ソイツのこと」
「……きれいさっぱり忘れた、って言ったらウソになる、かな」

次の恋でも始めてたら、きれいさっぱり忘れてるんだろうけど…。

それに多分わたしは、真哉のことを一生忘れないと思う。

彼氏ができても、他の誰かと結婚したとしても…。

「あー、だからか」
「…なに、が?」
「いや。だから、俺の告白受け取らなかったんだって思って。要は、まだ好きなんだろ?ソイツがさ」
「違う、好きじゃない」

それとはまた違うの…。そうじゃなくて…。

「元カレには、俺だって勝てねぇわな」
「ねぇ、あお、」
「頑張ってオンナから、奪い返せば?」

碧都は、笑った。笑顔じゃなくて、クスッと諦めたような、そんな感じの笑い方。

「それは…できないよ」
「やる前から、諦めんなよ。わかんねぇだろ?」
「分かる、分からないじゃないの‼︎イヤなの‼︎」

あ…。ちょっと、大声出しすぎたかな…。そんなつもりなかったんだけど…。

「なに、ムキになってんの。ま、せいぜいそうやってずっとソイツのこと、思い続けてれば?」

ギシッと音がなった。碧都が立ち上がったから。

また大股で、スタスタ歩いて行く。ねぇ、このままでいいの?

碧都いっちゃうよ?とめなくて、いいの?

「あお、と…‼︎」

ドアを開けようとした碧都に、必死でしがみついた。

「なに」

でも碧都の声は冷たくて…。あぁ、もうダメかなって感じた。

「…ううん、なんでもない」

わたしたちの会話は、終わった。