年下オトコたちの誘惑【完】

ドキドキがハンパじゃない。碧都を好きかも、と思ったら急にだ。

碧都に、わたしのこのドキドキ伝わってない?大丈夫?

ゆっくり、深呼吸すると。上から声が落ちてきた。

「ん」
「ん?」

碧都の短い言葉に首を傾げる。すると、もう一度『ん』と、言った。

見ると碧都は、わたしの前に手を差し出していた。

えっと…。これは、この上に手を置けってこと…?

碧都を見ると、ただジッとわたしを見つめてるだけで…。

見なきゃ良かった、と後悔する。だって、またドキドキしちゃったから…。

おそるおそる自分の手を伸ばし、碧都の手のひらに、そっとのせた。

「やっぱり」
「えっ、やっぱりってなに…?」
「杏、すげぇあの人の言葉にドンドン震え始めてたから」

碧都ってスゴイと思う。わたしの変化に気付いちゃうんだから。

阿部さんの言葉は、いちいちわたしの心に刺さっていった。

親友ならともかく、どうしてただの先輩、しかもお喋り好きな阿部さんに言わなきゃいけないの、って。

真哉の名前を出されると今でも、少しだけ苦しい。

阿部さんも、わたしの先輩なら今までそういう失恋経験だってあるはず。

だから、分かってほしかったんだけどな。わたしの気持ち。

そっとしておいてほしい、気持ちを。