「そ、そうですか…。まぁ、色々ありますよね、生きてたら…」

とりあえず笑って、ごまかす。

『そっかー。まぁ、そうだよね』って言って帰ってくれ‼︎

そう願っていたのに…。

「あ、そうそう‼︎何か最近‼︎会社に女性が来るのよね‼︎しかもキレイな人なのよ‼︎」
「あー、そうですかぁ…」
「それがっ‼︎課長のオンナっぽいのよー‼︎」
「…あぁ、そうですか」

あー、それ、できれば聞きたくないんだけどな。でも、阿部さんのお喋りは止まらない。

「しかもね‼︎課長より年上っぽいの‼︎最初は課長の浮気かなって思ったんだけど、その人、最近来るようになったしー。ねっ、課長とはもう連絡取ってないのっ⁉︎」
「あー、そう、ですね。すみません…」

早く帰ってほしくて、謝ってみたんだけど…。

「でも、どこかで見た顔なのよねー。わたし、どっかで会ったことあるかしらぁ?」

ーカランッー

阿部さんの一言に、持ってた器具を落とした。

「あっ、碧都ごめんっ。わたし、洗ってくるっ」
「いいよ、代わりならあるから。ん」
「あ、ありがとう…」

逃げたかったのに、失敗…。阿部さん、空気読んでくれないかな…。

「えーっ‼︎なになにー‼︎そういう関係っ⁉︎やっだー‼︎あ、もしかして。杏ちゃんの浮気だったりしてー‼︎」
「あの、すんませんけど。仕事中なんで、あまり居座らないでもらってイイっすか」

あまりに阿部さんが興奮したのが気になったのか、碧都が間に入ってくれた。