無理矢理引っ張られ、3分くらい歩いた時。

わたしの知ってる道に、たどり着いた。

「ここで、イイ」
「あ?」
「もう家近いから。送ってくれてありがとう」

碧都の手が緩んだ隙に、逃げるように離れた。

「じゃ、ね…」

うまく笑えたかは分からないけど、わたしなりにニッ、と笑って碧都に背を向けた。

「杏‼︎」

あはっ、こういう時に呼び捨てですか。ズルいですよ、碧都くん。

「なに…?」

ゆっくり振り向いたら、わりと碧都が近くに来てて右足が一歩後ろに下がった。

「あのさ、俺…」
「うん…?」
「今、言うべきじゃないって分かってんだけど、さ」
「うん」

急に碧都が真剣な顔をするから、こっちも真剣に聞かなきゃって。

でも呼吸を整える前に言われた言葉に、ドラマみたいに持ってた鞄を落とした。

「俺、杏が、好き」

一つ一つ、丁寧に区切られて言われた言葉。

「杏が楓とイイコトしたとか、ガマンできなくて、持ってたグラス床に投げつけた。俺だって、杏を送りたいって思ったし、俺だけ連絡先交換してないし」

碧都はクチビルを尖らせた。なんだ、碧都も普通の若いオトコノコ…なんだ。

「……なんか言えよ」
「あ、うん…。まさか、このタイミングでそんなこと言われるなんて思ってなかったから、心の準備ができてなくて…」

だって、ずっと目だって合わせてくれなかったし…。