年下オトコたちの誘惑【完】

「おい、」
「やだ、ってば‼︎わたしなんか食べたって、美味しくないし‼︎」
「は?」
「年はくってるけど、きっと満足させてあげられないから‼︎」
「お前、」
「お願いだから、命だけは助けて‼︎」
「おい、コラ‼︎人の話は最後まで聞けよ、アンコ‼︎」
「ア、ンコ…?」

そのフレーズに聞き覚えがあって、わたしはやっと冷静になれた。

「ったく、人を痴漢に仕上げんな」

この声…。ドキドキしながら、ゆっくり後ろを振り返った。

「あ、おとっ…‼︎」

ブワッ‼︎と感情が込み上げ、思いっきりイケメンの前で顔をグチャグチャに歪ませた。

「うわ、すげーブサイク」
「っ、知ってるわよ‼︎そんくらい‼︎」

『ブサイク』って言われたって、いい。ただ、ただ…。

碧都が会話をしてくれた、ってだけで…。それだけで…。

あー、わたし碧都のこと好きなのかも…。こんなに心臓バクバクさせて。

恋する乙女みたい…。なんて、もう31なのに。なに言ってんだろ。

「落ち着いたか?」
「……全然」

落ち着くわけないじゃない。今、碧都への気持ちが発覚したんだからっ。

多分だけど…。もしかしたら、“吊り橋効果”ってやつかもしれないけど…。