年下オトコたちの誘惑【完】

「明日…。明日も、行かなきゃいけないんだよね、きっと…」

仕事一日目にして、もう“行きたくない病”発生。

「明日は、碧都。目、合わせてくれるかな…」

拒否したのは自分なのに、ね。あれがもし、本気だったとしたら。

碧都を傷付けちゃったよね…。でも、どうしても受け入れることができなかった…。

キスだけじゃ済まない。それだけじゃなくて…。

鞄から携帯を出す。電話帳の『し』を探して、見つけだす。

「真哉…」

ボソリ、昔のカレシの名前をつぶやく。そういや、昔の歌であったっけ。

昔のオトコの名前、電話帳から消せないって。

まさか自分がこの立場になるなんて、思ってもみなくて。

『悲しい歌〜』なんて、のんきに言ってた気がする。

電話帳を見たら今度は、写真も見たくなって。

ついつい、写真も見てしまう、わたしの悪いクセ。

消しちゃいたいのに、その勇気が出なくて。

「……っ…」

そんでいっつも、こうやって泣いて…。こんなんじゃ前に進めないって、分かってる。

分かってるけど、真哉が大好きだったの。いつも一緒にいたくて。

だけど重荷になりたくなかったから、ワガママも言わなかったし、真哉の前ではイイコでいたつもり。

「それが、いけなかったのかな…」

もう、どうすることもできない。今、わたしが素直になったところで、真哉は戻ってこない。

「あんな、オトコ…」

手をギュッと握って、手のひらに爪を食い込ませた。