年下オトコたちの誘惑【完】

「ホントにぃ?」
「うん…ごめんねっ」

あの人は、なにも悪くない。『クスッ』と笑ったのは、バカにした笑いじゃなくて、優しく見守るような笑い。

わたしの目、おかしくなっちゃったかな…。

「やっぱり杏ちゃん、変だよ?ねぇ、帰る?」

あー、見せないようにしてるつもりなのにな…。

隠すの下手だなぁ、わたし。

「うん、ごめんね…。疲れちゃったみたい…。今日は帰宅してもいいかなぁ?」

今日は帰してもらおう。もしかしたら、ホントにただ疲れてるだけかもしれないし。

「うん。あおちゃん、杏ちゃん具合良くないみたいだから、帰していいでしょ?」

眞一郎が碧都に確認を取るから、わたしも自然と碧都を見た。

「あぁ」

でも、碧都はコッチを見ることなく返事をした。

なんだろ、コレ…。なんでこんなに、ズキズキするんだろ…。

泣きそうになってる、わたしがいる。わたしがあの時、拒否をしなければ良かったの…?

そしたら碧都は、わたしを見てくれた…?

ダメだっ、何かわたし弱ってる…。早いとこ退散しよ…。

「ごめんなさい…。お疲れ様でした」

クルリとドアのほうに体を向けると、声がかかった。

「杏、一人で帰るなよ。送るから」
「ダメ‼︎杏ちゃんは、ボクが送るよ‼︎」
「いーや、杏ちゃんはボクが送るんや」

三人とも優しいな…。この優しさに、甘えたくなっちゃうよ…。

でも…。いくら待ってみても、碧都は何も言ってくれないんだね。