「杏ちゃんは、やっぱ可愛いなぁ。ホンマ、ボクのもんにしたいわ」

少し距離を縮めてきた楓は、わたしの髪を掬い毛先ら辺にキスをした。

「か、えでっ…」
「んー?なに」
「なに、って…。は、ずかしいから…。そういうのっ」

髪にキスする男性なんて、今まで会ったことないから、その仕草を見るだけで緊張しちゃうんだってば…。

「もっと恥ずかしくなればいい」

髪に触れたまま、顔を近付けてきた楓。
また、胸のドキドキがマックスになる。

「杏」

また“杏ちゃん”から“杏”になって。自然と楓に目を合わせる。

「目、閉じてくれへん?」
「え、でも、それっ…」
「頼むわ」

あー、どうしよ。わたし、また楓にノミコマレソウ…。

少しずつ、少しずつ、近付けてくるクチビル。

あと、3センチくらい。

「杏」

掠れた声。時間がないとか言いながらも、こうして迫ってくる。

やっぱり…わたし。ノミコマレル…。

「……っ」

たった数秒。触れるだけの、キス。こんなんでいいのか、わたし。ちゃっかり、目も閉じたし。

誰かれ構わず、求められたらキスして。このまま四人に身体を求められたら、それも許してしまうのだろうか。

サイテーだな、わたし。