「へぇ〜。そんなに俺様が好きなん?」
「え、なに。楓っ、」
「んー?杏ちゃんが俺様好きっぽいから、俺も俺様になろうと思って」

ずっと『ボク』だったのが『俺』に変わって…。

腕を掴まれ、グイッと顔を近付けられた。

「ちょっ、冗談はやめてよ、」
「これが冗談に見えるんか?」

楓の目、冗談には感じない…。どんどん、自分の胸がドキドキしてくる。

楓はイケメンだし、ただのチャラ男じゃなかった。

それにちょっと友達思いだし、意外と優しいし…。

え、これって…。わたし、楓に惹かれてるの⁉︎

碧都は?尚樹は?眞一郎は?

やだっ、わたし4人ともにドキドキしてたりするかも…。

「杏、好きやで」
「……っ‼︎」

え、今…。

「隙だらけの、杏が悪い」
「なっ…。い、今…。した…?」

だって今、クチビル…。

「なぁ、もっと恋人らしいことしよか。杏が俺とキスしたってくらい、分かるようなやつ」
「な、なに言ってるのっ。ダメに決まってるでしょ⁉︎」
「ホンマに?全然“ダメ”に聞こえへんけど」

うん、わたしもそう思う。こんなんじゃ、『キスしてもいいよ』って言ってるようなもんだ。

何かわたし、4人とキスして。キスに慣れてきちゃってるような…。

わたし一人だけ外国人になってる気がするよ…。