「な、なんやねん」

楓の顔色が急に変わった。彼女に浮気がバレた時のような、そんな顔。

「楓って、自分好みの子がレジに来た時。連絡先聞いてるでしょ?」
「…げっ」

『げっ』って…。まったく…。

たまたま、何回か見た証拠現場。可愛らしいオンナノコ限定で、楓が『キミ可愛いよね、すごくタイプやねん。連絡先教えてくれへん?』って、『お腹すいたー。どこ食べに行く?』みたいな軽いノリで聞いてた楓を、すごいなって見てたんだよね。

あそこまでストレートだと、こっちも悪い気しないっていうか…。

現に言われたオンナノコは、『えぇっ⁉︎』って言いながらも嬉しそうにしてて。

まぁ、相手がイケメンだからってこともあるんだろうけど。

「いやぁ…。あれはですね、杏さん‼︎」
「別にいいんじゃない?今は、彼女いないっぽいし」
「じゃぁ、あーちゃんは?」
「え?」

さっきまで、あたふたしてた楓の姿はどこにもいなくて。

まさかの『あーちゃんは?』の言葉に詰まってしまった。

碧都が?碧都が、楓みたく声かけてるってこと…?

『お前さ、すっげぇ俺のタイプ。番号教えろよ』

なんて言うのかな…。って、碧都が言うと、なんか…。

「脅迫してるみたいだね…」
「は?杏ちゃん、どんな言葉想像してたん⁉︎」
「いや、だって碧都。俺様だから…」

そう、いつだってアイツは俺様だ。あ、でも。

たまに違うんだよな。たまに、その『俺様』がなくなる時があるんだよね…。

さっきみたいに、さ…。