ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~

「やっぱりね。じゃあ、誰だったのかしら?」

「えっとね……新藤さん」

「新藤さんって、新しい部長さんの?」


それまでは涼しい顔をしていた母だけど、私が新藤さんの名を告げたら、途端に目を丸くして驚いていた。


「うん」

「あらま……」

「でも誤解しないで? 私が酔い潰れちゃって、それで彼は仕方なく泊めてくれただけなの。その……エッチとかはしてないから」

「そうなの?」

「私は憶えてないんだけど、そうなんだって。でもね……」

「でも?」

「いっその事、そうなれば良かったのにな、って思ってる」

「あらま」


私が顔を熱くしながら想いを打ち明けたら、母はやはり驚いたようではあるけども、それだけではなく、まるで面白い話でも聞いたかのようにニコッと微笑んだ。


「お母さん、どうして笑ってるの?」

「そりゃあ、嬉しいからよ? 莉那から恋バナを聞くのって初めてだもの」