ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~

「ああ。でも、変な事はしてないから心配しなくていいよ」

「は、はい。ですよね?」


と言って私は笑顔まで浮かべてみせたけれども、心配どころか逆に期待すらしていた私としては、ちょっと、というかかなり残念だった。


でも、お泊まりをして、下着姿を見られ、同じベッドで眠り、娘のまみちゃんと少しだけど仲良くなった事は、一夜の出来事にしては相当な進歩ではないかしら。


肝心の新藤さんが私をどう思っているのか分からないし、まだ亡くなった奥様の存在が大きいとは思うけど、ゆっくりと少しずつでもいいから、もっと新藤さんとお近づきになりたいな。


あ、そうだ。


「新藤さん」

「ん?」

「私、うっかり脱いだブラウスを忘れて来ちゃいました」

「ふーん。明日でよければ持って行くよ」

「いえいえ、とんでもないです。私のミスですから、私が取りに伺います」

「家までかい?」

「はい。明日の帰りに伺ってもよろしいですか?」

「それはまあ、構わないが、わざわざ来なくても、僕が……」

「ご迷惑でしょうか?」

「ん……そんな事はないけどね。君が来ればまみも喜ぶと思うし」

「じゃあ、そうさせていただきます」


よし。作戦成功!

新藤さんの言い方に少し引っ掛るところがあったけど、まあいいか。


「ところで、具合は良くなったのかい?」

「え? ……あ、治ってます。すっかり」


言われてから気付いたのだけど、二日酔い特有の頭痛と吐き気がすっかり治まっていた。


「そうか。薬が効いたみたいだね」

「あのお薬、新藤さんはよくお飲みになるんですか?」


新藤さんって頭痛持ちなのかな。そう思って訊いたのだけど……


「以前はね。しょっちゅう無茶をしてたから……」

「ああ……」


そうか。日電にいた頃は、接待やら何やらで、お酒を飲む機会が多かったのね……