その家を後にする時、後ろを振り返ったらまみちゃんが今にも泣きそうな顔をしていて、私は思わず立ち止まったのだけど……


「さあ、行こう?」

「はい。でも、まみちゃんが……」

「いいから、早く」


私は新藤さんに腕を引かれ、後ろ髪を引かれる思いでその家から遠ざかって行った。


「し、新藤さん。まみちゃんが泣きそうでしたよ?」

「わかってる。いつもの事だ。ぐずぐずしてると余計にあの子が可哀相だから……」


ああ、そういう事なのかあ。

聞き分けの良さそうなまみちゃんでも、やっぱりお父さんと離れるのは悲しいのね……
なんだか私まで泣きたくなり、目頭が熱くなってしまった。



「あの女性は麻生さんと言って、個人で託児所をしているんだ。まみの他にもう一人、男の子の面倒を見ているよ。保育所がいっぱいで仕方なく預けたんだが、いい人でね。まみも良く懐いてるし、かえって良かったかなと思ってる。朝の別れは毎回辛いけどね」

「そうなんですか……」


今までは考えてもみなかったけど、片親で子どもを育てるって大変な事なのね……