「ママ!」


振り向けば、柔らかな陽射しを体に受け、ちょっと拗ねたような顔をした、愛しい女性が立っていた。


「莉那、大丈夫なのか?」

「ええ。もう落ち着いたから……」


莉那は、3年前に痛めた背中が少し痛むと言うので、車の中で待つように言ったのだ。

こうして無事でいる莉那を見るたびに、俺は3年前の奇跡を思い、神様に感謝せずにはいられない。莉那は俺を庇って背中を刺され、医者からは、たぶん助からないだろうと言われたのだ。


美沙さんが突き出した狂気の刃は、莉那の背中から腹部にかけて深くえぐり、背骨をも傷付けていた。そして大量の出血。

しかし手術の後、何日も何日も生死の境を彷徨った末に、莉那は奇跡的に生還した。医者が驚く程の、正に奇跡だった。


去年の今頃は車椅子に乗っていたが、最近では杖を使わなくても歩けるまでに回復した。莉那の頑張りには、全く頭が下がる思いだ。しかし……


そんな莉那に、またひとつ心配事が出来てしまった。