あれから、ちょうど3年の月日が流れた。


小春日和の今日は、歩いていると薄っすらと汗が出る程に暖かい。絶好の墓参り日和といったところか。

気の早い祖父母に買ってもらった赤いランドセルを背負い、真美は水の入った桶を手に提げている。


「重くないかい?」

「ううん、大丈夫だよ、パパ」


墓石の周りを掃除し、花と線香、それと彼女が好きだった桜餅を備え、墓前に立つ。


「今日は君に報告したい事が3つあるんだ。

ひとつ目は真美の事。
いよいよ来春は真美も小学生になるよ。祖父母からランドセルの色はと聞かれ、真美は迷わず“赤!”と言ったんだ。君と同じで、真美は赤い色が好きだからね。

そして真美は、そのランドセルを背負った姿を君に見せたいと言ってね。わざわざ今日は背負って来たのさ。

今は空だからいいけど、教科書やノートを入れたら重いから心配だよ。真美は見ての通り、体が細いからね。


ふたつ目は僕の仕事の件だ。今年いっぱいで会社を辞め、プロダクションを立ち上げる事にしたよ。テレビCFを制作するプロダクションさ。

大学とタイアップしたシリーズもののムックがなんとか軌道に乗ってね。多少なりとも売上に貢献出来たんで、雇ってくれた社長の恩には、一応報えたかなと思う。

やはり僕には、テレビの仕事が向いてるんだね。今から楽しみでワクワクしてる。と言っても、前のような無茶はしないよ。社員を含め、仕事とプライベートのバランスを取る。それを会社のモットーにしようと思う。

もう真美には、決して寂しい思いはさせないから……」

「あら。真美ちゃんだけなの?」