「勝手に他人の家に上がり込んで、なにその格好? 龍一郎さんに色気で迫るつもり?」

「うっ……」


実際のところ、そんな気がなくもなかった私は、返答に詰まってしまった。


「さっさと着替えて出て行きな」

「……嫌です」

「はあ? 出てけって言ってんだよ!」

「あなたに言われる所以はありません」

「警察を呼ぶよ。いいの?」

「け、警察……!?」


まさか“警察”なんて言葉が出るとは思わなくて、私はかなり狼狽えてしまった。


「そう。立派な不法侵入だからね」

「それは違うと思います。私は新藤さんに頼まれて来たんですから」

「あんた解ってないね? 私はこの家の身内だよ? その私が出てけって言ってんだから、出て行かないなら警察を呼ぶよ」


美沙さんは、手提げのバッグから携帯を取り出した。


「どうすんの? 本当に警察を呼ぶよ? いいの?」

「…………」


く、悔しいー!

私は、制服を着た警官に、不様にも連れて行かれる自分の姿を想像し、情けなくなった。でも、引き下がりたくない。もし私が逃げたら、残されたまみちゃんがどうなるか。それを考えたら……


私は歯ぎしりをし、美沙さんは口を歪ませてニヤニヤしていたら、ガチャっという音に続き、玄関のドアが勢いよく開いた。