「なんであんたがここに居るのよ?」


美沙さんの声は、女性のそれとは思えないほど低く、抑揚がなかった。


「ま、まみちゃんの具合が悪いからって、麻生さんから連絡を戴いて、新藤さんは職場の打ち上げがあるので、代わりに私が……」

「チッ。あのクソばばあ、なんで私に連絡しないのよ!」


うわっ。美沙さんったら、麻生さんの事を“クソばばあ”って言った……

私が呆気にとられていると、美沙さんの視線が下がり、


「まみ、あんた仮病を使ったね!?」


と怒鳴った。するとまみちゃんはビクッとして、私の後ろに身を隠した。


「違います。まみちゃんを怒鳴らないでください!」


私も負けじと美沙さんを怒鳴り、腰を屈めてまみちゃんを振り向いた。まみちゃんは、可哀想に涙で目を潤ませていた。


「まみちゃんはお部屋に行ってて?」


と言ったのは、私と美沙さんのやり取りを、まみちゃんに見聞きさせたくないからだ。


「…………」

「大丈夫だから。ね?」


まみちゃんの頭を撫でながら言うと、ようやくまみちゃんはコクっと頷き、トボトボとその場を離れて行った。


「ふん。まるで母親気取りね」


振り向くと、美沙さんが相変わらず憎々しげに私を睨んでいた。相当に怒っているみたい。でも、怒りだったら私も負けてないんだから!