「分かりません」

「後悔しているのよ。癇癪を起こした事を。それと、恐れてるの」

「誰をですか?」


私は、当然ながら美沙さんを意識してそう言った。つまり、まみちゃんは美沙さんを恐れていると思ったから。


「“誰を”と言うよりも、“何を”なのよね。まみちゃんが恐れているのは、ママが帰って来ない事なの。それと、莉那さんが来てくれない事もね」


えっ? 私?

急に私の名前が出てびっくりしたけど、それはひとまず置いといて……


「でも、まみちゃんのママは、もう……」

「そうね。でも、まみちゃんは知らないのよ。ママが死んじゃった事を。まだ理解出来ていないの。まみちゃんは、自分がいい子じゃないから、ママがいないと思ってるのよ」

「えっ? そんなばかな……」

「私も今日知って、びっくりしたわ。このところ莉那さんが来ないのも、自分がいい子じゃないからだって、まみちゃんは思ってるのよ。ううん、思い込まされてるの」

「思い込まされてるって……美沙さんにですか?」