「こんな事を言っては何だけど、まみちゃんはあの人から虐待されてるんじゃないかしら」

「……虐待?」


美沙さんが絡んでいるとは思ったけど、まさか麻生さんの口から“虐待”という言葉が飛び出すとは、私は思ってもみなかった。


「と言っても肉体的なものじゃなく、精神的に、という意味ですけどね」

「あの、それはどういう事でしょうか。というか、何か根拠がおありなのですか?」

「あります。今日、まみちゃんは初めて癇癪を起こしたのね。きっかけは他愛のない事だったの。勉くん、もう一人お預かりしている男の子なんだけど、その子とオモチャの取り合いをした事なの」


ああ、さっき積み木で遊んでいた男の子ね。


「まみちゃんにしては珍しい事もあるなと思って、むしろ私はホッとしたのね。ところが、癇癪がなかなか収まらなくて大変だったの。そしてようやくそれも収まったと思ったら、その後はずっと塞ぎ込んじゃって、今もそうだけど」


ああ、なるほど……

私はさっき見たまみちゃんを思い浮かべた。横を向き、俯いて背中を丸めたまみちゃんの姿を。もちろん、あんなまみちゃんを見たのは今日が初めてだ。


「あの子、どうしてあんなに塞ぎ込んでるか分かる?」

「え? えっと、それは……」


突然の質問に私は戸惑ってしまった。なぜまみちゃんはずっと塞ぎ込んでいるのか、よね?

うーん……